【イベントレポート】NEC×日立 DXプロフェッショナルに聞く!キャリアトークセッション

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どちらも歴史ある大企業でありながら、果敢にDXを推進し新たな価値の創造に挑戦している日本電気株式会社(以下、NEC)と株式会社日立製作所(以下、日立)。両社のDXに関する取り組みや働き方について語り合う機会として、2024年12月3日にキャリアトークセッションが開催されました。
DX推進の現場で活躍する両社社員のリアルな仕事の話や、視聴者からのQ&Aも交えて大いに盛り上がった当日の様子をレポートします。
長い歴史を築きながら、変革を続けているNECと日立
イベントの冒頭では、司会進行役を務めるNECキャリア採用担当のチュ氏と、日立キャリア採用担当の草葉氏から各社の紹介が行われました。
チュ:NECは2024年に創業125年周年を迎えた歴史ある企業で、世界50以上の国と地域で約11万人の従業員が活躍しています。現在とくに力を入れているのが、DXを通した社会課題の解決です。生体認証やAI、セキュリティといった先端技術の開発にも積極的に投資し、「海底から宇宙まで」をキーワードに、幅広い分野で新たな価値を創造しています。
今回当社から登壇するのは、デジタルプラットフォームビジネスユニットに所属し、全業種を横断してDXを推進する役割を担っている社員です。NECのDX推進技術や実際の業務について詳しくお話しさせていただきます。
草葉:日立は1910年の創業以来、時代ごとの社会課題を解決してきた企業です。 現在は日立の強みである「IT」「OT(制御・運用技術)」「プロダクト」の3つを活用し、社会イノベーション事業を推進しています。
当社からは、コンサルティング・サービスデザインからシステム開発までを一貫して行うデジタルエンジニアリングビジネスユニット(25年4月現在はAI&ソフトウェアサービスビジネスユニット)に所属する社員が登壇します。2021年に日立グループとしてジョインしたシリコンバレー発のGlobalLogicとタッグを組み、お客さまのDXをどう推進しているのかをご紹介させていただきます。
DXの最前線で活躍する両社の社員が登壇
続いて登壇者の2人から、これまでのキャリアなどを中心に自己紹介が行われました。
木村:NECのデジタルプラットフォームビジネスユニットに所属する木村と申します。私は複合機メーカーを3社経験した後、2021年11月にNECへキャリア入社しました。
1社目ではアプリケーションの開発業務を担当し、出産を機に転職してSEへとジョブチェンジしました。そこから2人目を出産し復職したタイミングで、マーケティング部門とは別の組織として新設されたデジタルマーケティング部門への異動を志願します。そこではデータを活用したマーケティング活動などを経験しました。
その後、新規事業に挑戦するため再び転職し、企画メンバーとしてアジャイル開発にも参加しました。こうした幅広い経験を生かし、現在はNECで「Exastro(エグザストロ)」に関するサービスの提供や認知向上に取り組んでいます。
杉原:日立のデジタルエンジニアリングビジネスユニットに所属している杉原と申します。私は2008年に日立へ新卒入社し、生産技術本部でシステム開発の効率化に取り組む開発フレームワークの整備などに約10年間従事しました。
その後、産休・育休を経て、アジャイル開発のコンサルティングサービスを立ち上げ、社内外のアジャイルプロジェクトの立ち上げ支援に取り組みました。現在は、GlobalLogicとともに日本での顧客協創活動に従事しています。
GlobalLogicは、世界約20ヵ国に70拠点を持つデジタルエンジニアリング企業です。これまで拠点がなかった日本での事業展開を日立が支援し、DXによって新たな価値を創出するべく、デザイン思考を活用しながらサービスを提供しています。
お客さまのDXを推進。具体的な事例を通じて紹介する「私の仕事」
それぞれ異なるキャリアを歩みながら、DXの最前線で活躍している2人。具体的にどのような業務を担当しているのか、「私の仕事」をテーマにトークセッションが繰り広げられました。
草葉:まずは木村さんに、「Exastro」について詳しくお伺いできればと思います。
木村:「Exastro」は、システム構築や運用業務を自動化するサービスです。既存システムの運用を効率化するツールと、開発と運用の同時進行を支援するツールの2つで構成されています。
「Exastro」が開発されたのは、私の上司である吉田が自身の作業を効率化しようと考えたことがきっかけでした。そのため多くの方に活用していただきたいとの想いから、あえて製品化せずオープンソースソフトウェア(OSS)として無償提供しています。
草葉:社員1人の熱意から生まれたツールを無償で提供するのはすばらしいですね。しかし無償というと、「Exastro」でどのように収益を上げているのでしょうか?
木村:運用のプロであっても自動化のノウハウは持っていない場合が多いため、自力での実行は難しいのが現実です。そこで、当社では自動化を支援するサービスを有償で提供しています。また、導入後すぐに使いたいというニーズに応え、SaaS型サービス「Exastro IT Automation Cloud」も有償で提供しています。
草葉:幅広いお客さまが導入されていると思いますが、印象に残っている事例はありますか?
木村:製造業のお客さまは創業からの歴史が長く、オンプレミスとクラウドの両方のシステムを持っているケースが多くあります。そのためそれぞれの管理が必要になり大きな負担になっているという課題をお持ちです。「Exastro」を導入すれば、一元管理が可能になるため、お客さまに大変喜んでいただいています。
また通信キャリアのお客さまが、導入後に自社で自動化を推進された事例も印象的です。これまで1時間かかっていた作業が2分に短縮でき、ヒューマンエラーも解消されたと非常にご満足いただきました。
チュ:杉原さんもお客さまのDX化を推進されていると思いますが、事例を教えていただけますか?
杉原:私の部門では、VRやメタバース、生成AI、データ分析を活用した案件に対応することが多いです。開発手法はアジャイル開発が基本で、お客さまのDXを推進する上ではデザイン思考を活用しています。デザイン思考とは、商品やサービスを使う人間を中心に据え、人間の経験を軸にプロダクトを開発する思考法です。
このデザイン思考を生かした事例としては、家電メーカーさまのCRMを支援した案件が挙げられます。大量の顧客データを活用してカスタマージャーニーマップを自動生成し、それをもとにしたサービス展開を検討しました。GlobalLogicのアセットを生かし、データ分析やCRMの専門知識を持つ海外のメンバーと連携して取り組んだ案件です。
チュ:GlobalLogic社とタッグを組んでプロジェクトを推進することですね。協業することによって、どのようなシナジーが生まれていますか?
杉原:大きく2点あります。まず1つめはスピード感です。GlobalLogicでは価値提供のスピードを重視しており、トライアル&エラーのサイクルがとても速いんですね。そうした組織文化に刺激を受け、これまで半年かかっていたサービスが3カ月で提供できるようになりました。
2つめは提案力です。各拠点に高度な先進技術や専門知識を有するエンジニアがそろっており、多角的なアプローチでお客さまの課題解決ができるようになったと感じています。
チュ:お話を伺っていると、さまざまなスペシャリストやステークホルダーを取りまとめる必要があるため、業務量も多く忙しいのではないかと思います。どのように働き方を工夫しているのでしょうか?
杉原:会社のリモートワークやフレックスタイム制度を活用することで、子育ての時間を調整しながら、自分の裁量で柔軟な働き方ができています。
チュ:仕事と家庭の両立が可能な働き方ができているということですね。木村さんもご多忙だと思いますが、働き方についてはいかがですか?
木村:私自身は子どもたちが大きくなってから転職してきたのですが、チーム内には子育て中の社員が多くいます。それぞれ育児休暇を取得したり保育園のお迎えに行ったりと、子育ての都合に合わせて仕事をうまく調整していると感じます。
これまでの経験を生かし、新たな挑戦を重ねて築く「私のキャリア」
各社員の具体的な仕事内容の紹介に続き、「私のキャリア」というテーマでこれまでの経歴を振り返るトークが繰り広げられました。
草葉:木村さんは自己紹介にあった通り、これまでさまざまなご経験を積まれていますが、それを現在の業務にどう生かしていますか?
木村:NECへ入社するきっかけとなったのが、募集要項です。「SEの経験があり、マーケティングができる人。さらに開発経験があるとなお良い」というもので、私の経歴にぴったりでした。
直近ではマーケティング業務を担当することが多いですが、同じチームに開発担当もSEもいるので、今までの業務経験がすべて生かせる環境です。前職と異なるのは、以前は膨大な範囲のデータを分析していたのに対し、現在はシステム運用という限られた領域でのマーケティング活動に従事していることです。初めての経験なので新しい発見やチャレンジの機会が得られています。
チュ:まさに木村さんのバックグラウンドが生かされていますね。木村さんのほかにも、多様なバックグラウンドを持つ方はたくさんいらっしゃるんでしょうか?
木村:百貨店でシステムの保守をされていた方がいるなど、異業種からキャリア入社しているメンバーも多いです。私を含めチームの約3割がキャリア入社者となります。
杉原:私が所属している部署にも、キャリア入社者が2割程度います。GlobalLogicと仕事をしているため、さまざまな国籍の仲間とともに働いています。
草葉:両社とも多様な人財が活躍しているんですね。今度は杉原さんにもお伺いできればと思いますが、これまでどのようにキャリアを築いてこられたのでしょうか?
杉原:自分のやりたいことや興味のあることを積極的に発信し続けた結果、キャリアを広げるさまざまな機会が得られました。たとえば「英語学習や海外に興味がある」と伝え続けたことで、1年間の海外業務研修に参加できましたし、自ら手を挙げてアジャイル開発のサービス立ち上げも担当しました。
日立は事業領域が幅広くさまざまなポジションがあるので、やりたいことを伝えれば、手を挙げる人に多くの機会を与える風土があると感じます。
木村:私は転職することで新たな経験を積んできたので、杉原さんは1社の中で多様な業務に挑戦されてきてすばらしいと感じました。杉原さんご自身の努力もあると思いますが、社員の挑戦を支援する会社の制度があるのでしょうか?
杉原:会社の制度としては、グループ公募制度があります。公募参加会社が求人する各ポジションに対し、各社の社員が自らの意志で応募できる制度です。このように制度面からも挑戦や自律的なキャリア形成を支援する環境が整っていると感じます。
チュ:NECにも公募制度があり、幅広い職種と事業領域に挑戦している社員が多くいますね。ちなみに木村さんの周囲で公募制度を使っている方はいますか?
木村:2名ほどいて、まったく違うポジションから異動してきているので、社内でもチャレンジできる機会が設けられていると感じます。お2人ともとても楽しそうに働いているのが印象的です。
杉原:私の周りでもグループ公募制度に応募している人は多いです。時代とともに、社員のキャリア自律を支援する体制がさらに充実化されているのを感じます。
仕事と子育てはどう両立する?大切なのは自分軸で考えること
トークセッションが佳境を迎えたところで、最後に視聴者から寄せられた質問に登壇者が答えるQ&Aが実施されました。
──キャリアを考えるにあたり、女性ならではの意識すべき点があれば教えてください。
杉原:私の経験をベースにお話しすると、やはり出産に際してぶつかる壁があると思います。最近では、男性にとっても育児休暇は重要なテーマですよね。結論として仕事と育児の両方を完璧にこなすのは無理なので、自分の人生において何を優先したいか、仕事と家庭のバランスをどうしたいのか、自分の軸を持つことが大切だと思います。
木村:私は過去に子どもを保育園に預けて会社に行っていた際、子どもに泣かれてまで仕事することが正しいのか悩んだことがありました。そんな時に軸にしたのは、「子どもに誇れる仕事ができているか」ということです。保育園に預けてでも「やりたいことをやっている」と胸を張って言えるなら、それが自分にとっての正解だと考えました。
──DXプロフェッショナルとして必要なスキルや経験は何でしょうか?
木村:新しいことにチャレンジしながら、世の中の流れや最先端技術に常にアンテナを張ることが重要だと思います。日々新しいものが登場している中で、それらを的確にキャッチし、自分の中に取り込んでいくことが求められていると感じます。
杉原:木村さんと同じ意見ですが、最先端の技術は多岐にわたるので、すべてを習得するのは難しいという問題があります。そのため自分の興味や目の前の課題に合った技術をまず学び、そこを入口として知識を広げていくのが良いと思います。
──自社の強みと弱みを端的に教えてください。
杉原:日立の強みは、多様な事業領域があり、それらを組み合わせることでイノベーションや独自のサービスを生み出せる可能性がある点です。ただし事業規模が非常に大きいため、それぞれのセクターの壁を越えていかに連携するかが現状の課題だと感じています。
木村:私たちも「海底から宇宙まで」と幅広い事業領域を持っていることが強みです。そのため社内でジョブチェンジでき、人材の異動によりイノベーションが生まれやすいことが魅力だと思います。
一方の弱みとしては、やはり規模が大きいゆえに組織全体を動かすには労力がいることですね。強みと弱みが表裏一体の関係にあると感じます。
ここでは紹介しきれないほど多くの質問が寄せられ、Q&Aは盛況のうちに終了。全体を通して両社のDXに関する取り組みと、その最前線で活躍する社員の仕事やキャリアの築き方についてのリアルを知ることができる貴重な機会となりました。
今後も変革に取り組み、新たな挑戦を続ける2社の動向にぜひご注目ください。
※ 記載内容は2025年1月時点のものです