公共システム事業部 公共基盤ソリューション本部 先端基盤システム部の門間 則和と左近 雪絵。近年注目を集めているがんの全ゲノム(DNAが持つすべての遺伝情報)解析を担当しています。お客さまである大学と手を携え、膨大なデータの解析に挑んできた道のりや、国の大規模事業に関わるやりがいを語ります。
大学が請け負う解析事業を支援。1万症例を終え、さらに大規模に推進を
近年注目を集めているがんの全ゲノム解析。株式会社日立製作所(以下、日立)は、お客さまの大学が請け負っている解析事業の一部を支援しています。
門間:がんに新しく罹患される方は、国内で毎年およそ100万人います。治療法がなかなか見つからない方や、薬はあるけれどよりよい治療をめざしたいという方に対して何ができるのか、という課題がありました。
2019年には、患者に適した治療法を見つけるためのがん遺伝子パネル検査が保険適用となりましたが、決められた遺伝子だけを見る形です。その点、全ゲノムはすべての遺伝子を見るので、このデータの活用でより効果が広がると期待されています。現在すでに、1万症例の解析が終わっています。
主任の門間は、お客さまの一連の実務に関して支援を続けています。
門間:お客さまが全ゲノムのデータを受け取って解析し、結果を関係者に返す取り組みをサポートしています。一連の業務を管理するシステムを整備し、お客さまとともに運用を形にしているところですね。
データを提供いただく際のファイルなど、納品方法をお客さまとすり合わせた上で関係者に展開し、その通りに納品されているかを確認したり、解析結果をデータ提供元の医師に共有したりしています。
今後はもっと大規模に、年間数万症例の解析を進められるように事前調査を始め、より効率的な管理ができるかどうかを検証していく予定です。
一方、左近はお客さまの業務効率化に向け、アプリケーションの開発を任されています。
左近:解析するためにお客さまが受け取る検体の配列情報などのデータは、必ずしも一括で届くわけではありません。追加や変更がしばしばあり、その都度変更点を管理表に打ち込んだり、届いていなければメールで依頼したりと、手作業で管理してきました。そこを効率よく管理できるようなアプリケーションを開発、運用するのが私のミッションです。
煩雑なデータ管理を円滑に。アプリケーション開発のためプロジェクトに参画
当プロジェクトには最初から携わっているという門間。立ち上げから現在までの道のりをたどります。
門間:2022年度中に1万症例のデータを解析しなければならないという、お客さまのミッションがありました。 膨大な量の解析を計画通りに進める作業は、並大抵のことではありません。
まず、データを受け取る段階から一筋縄ではいきませんでした。データが届くタイミングはまちまちですし、データの容量としてはとてつもなく大きいんです。それをきちんと受け取った上で、送付元の情報とデータを照らし合わせて間違いがないかを確認するような、神経を使う作業でした。
解析においてもお客さまにさまざまなご協力をいただきながら、なんとか同年度中に目標を達成できたという形です。
解析数が増える中、プロジェクトの途中からメンバーに抜擢されたのが、他の研究者向けにアプリケーションを開発、運用していた左近です。その経緯を話します。
左近:お客さまとしては解析数が多く、データを手作業で管理するのが難しくなってきました。煩雑な作業をアプリケーションの導入によってスムーズに進められないかという話が持ち上がり、ライフサイエンス分野で類似の案件に関わっていた私が加わることになったんです。
ただ、医療系の知見はあまりなかったので苦労しました。例えばお客さまの課題を探ってシステム化を提案する場合も、業務内容を理解するだけの知識がないとまずお話ができませんし、もちろん課題の把握や分析も難しくなってきます。
そこで同じ部署で長く解析支援を続けているメンバーや、ハードウェアのスパコンの運用でお客さまとの付き合いが長いメンバーに、アドバイスを求めるなどして知識を補ってきました。
ゲノムは刺激的で楽しい。学生時代から変わらぬ想いで向き合い、得る達成感
プロジェクトで印象深い出来事として、門間は困難を極めた解析作業を挙げます。
門間:1症例あたり2~3日かかる解析を、1万件やり遂げられたのは、状況をリアルタイムに可視化して共有し、いろいろな人たちに協力いただくことができたからです。
お客さまには計算機を増やすようにお願いしたり、解析処理が滞った際にはフローの見直しを依頼したりし、そのたびにご対応いただきました。さらには、分からないことがあれば社内の有識者たちに広く意見を求めるなど、一つひとつの取り組みを積み上げることで改良し続けられたと思っています。
左近は、周囲との連携を深めて「密度の濃い提案」をめざしたプロセスを振り返り、手応えを口にします。
左近:与えられた期間が短くても質の高い提案をするため、部署内の全3グループのスペシャリストや、他部署の有識者に協力を仰ぎました。私の考えだけではなく、ハードウェアやクラウドなどに強い人たちの意見を織り交ぜると、多角的で密度の濃い提案ができると実感したんです。
あらためて、どんな状況下でも単にお客さまの要望に沿って終わるのではなく、よりよい提案につなげようと自ら動く姿勢が大事だと学びました。
人々の健康増進に貢献するプロジェクトに携わることに、2人は大きなやりがいを感じていると言います。
門間:大学院時代、ヒト全ゲノムを解読できたというニュースで世間が盛り上がっていた頃からこの分野に関わり、日立入社後もずっと関連の仕事をしています。「ゲノムは刺激的で楽しい」という想いは、当時からまったく変わっていません。
これだけ大規模なゲノムデータを扱い、がんという身近な病気に関わることができるのも、日立という大企業に勤めているからこそ。とても貴重な機会だと実感しますし、節目ごとに達成感を味わっています。
左近:私は大学で生物学などを学び、働き始めてからは複数の部署を経験しながらも生物や医学に携わってきました。各分野で専門性の高いお客さまや同僚に囲まれながら勉強を続けられること、そしてがんという社会課題を解決する仕事に全力を傾けられることに、やりがいを感じています。
我々の取り組みをもとに世の中が動いていく。日立には多くのチャンスがある
国の重要プロジェクトで奮闘し、着実に階段を上ってきた2人。それぞれに今後のキャリアを思い描きます。
左近:もともと大学や研究所のお客さまが持つハードウェア上でシステムを作るのが得意でしたが、今回のプロジェクトでクラウドの技術や、医療系の解析の業務知識も得られました。それらはこのプロジェクトや将来関わる案件に還元したいですし、クラウドの分野にもどんどん挑戦していきたいです。
門間:全ゲノム解析が保険適用になる日まで、仕事をやり遂げたいと思っています。今後、ゲノムデータを活用する段階になるとさまざまな企業が参入し、競い合っていくことになるでしょう。そこで私も市場づくりに貢献し、プレーヤーとして社内起業や新事業の立ち上げを実現できたらと考えています。
日立という会社の魅力について、左近は自らの体験を絡めて語ります。
左近:「挑戦したい業務や分野がある」と声を上げれば、決して否定されることはなく、むしろ応援してくれるような社風です。私も以前、上長にやりたいことを伝えると、社内の有識者につないでくれて、スムーズに話を聞きにいくことができました。
仕事とプライベートの両立もしやすいと感じでいます。私はリモートワークを取り入れていて、出社するのは週1日。他の日は、お客さま先に行く用件がなければ在宅で仕事をしています。
門間は仕事の規模の大きさに触れながら、未来の仲間たちに向けてこう呼びかけます。
門間:日立の風土は、ボトムアップと言えるのではないでしょうか。それぞれのメンバーが感じている課題を口にすることで大きな動きに結びつくこともあり、現場の意見が尊重される印象です。
また、私の仕事で言えば、国のプロジェクトを請け負うお客さまの実務を担っているのが日立です。つまり、我々の取り組みをもとに世の中が動いていくんです。大きなチャレンジをしたい人にとっては、さまざまなチャンスが用意されていますし、協力してくれる優秀な同僚たちもたくさんいます。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです