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BUSINESS 2024.11.21

多くの企業に役立つ知的財産ソリューションを。「1対多」のビジネスに携わる醍醐味

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株式会社日立製作所(以下、日立)の公共システム事業部 官公ソリューション第一本部で主任技師を務める金子 愛梨。同事業部では珍しく、民間企業や研究所をお客さまとして知的財産(以下、知財)ソリューションを手がけています。多くのお客さまに対してSaaSを提供するという「1対多」の仕事の難しさややりがいについて語ります。


この記事の目次

企業の経営・事業戦略の立案に活用できる「特許情報分析サービス」などを提供

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金子が所属する官公ソリューション第一本部の官公システム第三部では、知的財産管理システム「PALNET/MC6」と特許情報提供サービス「Shareresearch」、特許情報分析サービスの3つのソリューションを展開しています。

「PALNET/MC6は知財管理業務における知財情報のスムーズな共有と業務効率化を支援するシステムで、Shareresearchは特許出願前に他社の権利を侵害していないかを調べるなど、国内外の特許情報を効率的に検索・閲覧できるサービスです。

この2つについては前身のシステム時代を含めると、40年以上提供を続けています。そして2023年に提供を始めたのが特許情報分析サービスです。日立が世界98の国と地域の膨大な特許文献を整理・加工し蓄積してきた高精度な解析データを生かし、企業の経営・事業戦略の立案などに役立てていただくことができます。利用にあたっては特許業務の専門スキルは不要で、経営・事業戦略、営業やマーケティングなど幅広い場面での活用を想定しています。

現在、Shareresearchは百数十社にご利用いただいているほか、特許情報分析サービスについてもトヨタ自動車さまをはじめ徐々に広がってきています」

金子が担当しているのはShareresearchと特許情報分析サービス。マネージャーとして企画や開発、運用、ヘルプデスクの取りまとめをしています。

「プロジェクトの管理に加え、サービス事業特有の業務もあります。SaaSとして新たに展開する前に市場調査を進め、方針を決めていく担当者たちの取りまとめやチェックもしています。

社内メンバー7人のほか、開発や運用、販売に携わる協力会社の皆さんとも日頃やりとりするので、各人との関係づくりや風通しのいい職場づくりを心がけています。物事を進める際には単独で決断するのではなく、周囲の人たちと協調することを重視していますね。自分の知識が足りない部分についてはチーム内の有識者に率直に意見を求めるなど、コミュニケーションを取りながら解決をめざしています」

「絶対に世の中にリリースする」。粘り強く各所と調整を重ね、新サービスを立ち上げ

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かつては、官公庁向けの大規模システムのプロジェクトなどに携わっていたという金子。そこから2022年、民間企業や研究所をお客さまとする現在のチームに加わりました。

「当時はまだPALNET/MC6とShareresearchしかなく、ちょうど特許情報分析サービスを立ち上げようとしている段階でした。

各企業では昨今、個人の主観やノウハウ、経験値だけで新しい価値を生み出すのが難しくなってきており、データドリブン型経営への移行が進む中で、客観データの需要が高まっています。そこで日立の強みである1億件以上の特許データをビッグデータとして活用し、お客さまの価値につなげようという構想が生まれたのです。

知財情報と、マーケット情報や研究開発情報などの非知財情報を統合的に分析することで、現状をふかんするとともに将来展望を示し、経営・事業戦略に役立てる『IPランドスケープ』(正林国際特許商標事務所所長正林 真之弁理士の登録商標)という手法が世の中で広がりつつあることも、背景の1つですね」

新サービス立ち上げまでの道のりは、決して平たんではなかったと語ります。

「特許情報分析サービスの構想は数年前からありましたが、他社との差別化を考えたり、事業として確立させるために関係者を巻き込んでいったりするのが難しかったようです。

そこで私が参画したんですが、新ビジネスの創出に関わるのは初めてで分からないことばかり。新ビジネスについてあれこれと考え、ブラッシュアップをすればするほど深みにはまっていく部分もあるので、自分の中で期限を決めてやり遂げることを意識しました。

日立で事業を生み出すということは、企業としてビジネスをやる意義、お客さまに提供できる価値、他社とのポジショニング、財務的な観点など、さまざまな事項を検討しなければなりません。社内全体で認識を合わせるには多くの調整が必要でしたが、『絶対に世の中にリリースするんだ』という意志を持ち続け、粘り強く関係各所とやりとりを重ねたことで実現にこぎつけました」

お客さまに受け入れられて初めて「成功」。正解がない仕事の難しさとやりがい

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金子は今のプロジェクトで、多くのお客さまに向けて手がけるSaaSならでは難しさを感じていると言います。

「以前携わっていた官公庁向けの大規模システムでは、特定のお客さまからの要件を確実に満たすために課題の解決や最適な方法を検討しながら、システムを開発することがミッションでした。

でも今は民間企業向けにSaaSを提供するという、少し毛色の違う仕事内容。お客さまとの関係は『1対1』から『1対多』に変わったので、何がお客さまの価値につながるのかを日立側で考え、納得いただけるようなサービスに仕上げていくのが難しいところです」

ある意味で「正解がない」とも言える取り組みを、どのように進めていくのか。金子は続けます。

「日立としてもビジネスに投資するという側面で考えた時に、作ろうとしているその機能が多くのお客さまにとって本当に価値のあるものなのかを見極める必要があります。現状では世の中のニーズ、チーム内の有識者の意見、お客さまの声を踏まえ、さらに事業としての長期的な展望も考慮した上で、チームとして決断を下しています。

私たちの仕事には正解がなく、最終的にはお客さまに受け入れられて初めて成功と言えるのではないでしょうか」

一方で、1対多のビジネスだからこそのやりがいもあると話す金子。

「特定のお客さま向けに確実に要件を反映させるのとは違い、比較的自由度がある中で、やりたいことを進めながらものづくりを実現できる点がこの仕事の醍醐味だと思います。お客さまの業界が多岐にわたるので、サービスの利用方法などで新たな発見が多いのもおもしろい点ですね。

また、サービスをつくって終わりではなく、販売活動にも関わるんです。私たちSE部隊もアピールポイントや、ビジネスをどう軌道に乗せていくかなどの販売戦略を営業担当者とともに練ります。イベントやプロモーション活動の場で多くのお客さまとお話ができることも、新鮮に感じています」

新たなビジネス形態を経験し、思考回路が一変。社会課題の解決にさらなる注力を

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現在展開する特許情報分析サービスの反響について、金子は説明します。

「データの精度が高く、ガイドとしてノウハウも提供できるのが強みです。導入いただいているお客さまからは、分析結果の共有や、Shareresearchとの連携による作業効率化がスムーズに進んでいるという声をいただいています」

サービスの将来像に関しては、「日本を元気にする」という大きなビジョンを絡めながら思い描いています。

「グローバル化が進み、技術の発展で人々のニーズが多様化する中、企業が生き残るには新しい価値やイノベーションの創出が欠かせません。今後、知財分野になじみのない方々もサービスを活用いただくことで、経営・事業戦略の精度が上がり、多くのアイデアが生まれることを願っています。それが企業や世の中の発展につながればうれしいですね」

そして自身のキャリアに目を向け、今のプロジェクトでの経験を生かしていきたいと話す金子。

「民間企業向けの1対多のサービスを、事業分野に関係なく展開する。そんなビジネスを初めて経験したことで思考回路が一変し、視野が広がったと感じています。社会課題の解決をめざして新たなビジネスを生み出せないかと考えるようになったんです。

気になるのは環境の分野です。地球温暖化や気候変動という世界的な課題に対して、官公庁や自治体、民間企業など各方面とつながりがある日立だからこそできることがあるのではないかと考えを巡らせています」

日立という会社の魅力について語る時、金子は「開拓者精神が根づいている」と実感を込めます。

「新しいアイデアを提案したとき、それを否定するような人はまずいません。上司はむしろ、さまざまな案を生み出せる人財を求めているので、アイデアに対して適宜、アドバイスや人の紹介をしてくれます。

また、公共のお客さま向けの大規模システムを開発することで社会に貢献したり、多くの企業をターゲットにした1対多の関係で新事業に挑戦したりと、多様なビジネス形態を経験できることも日立の魅力ですね。これから入社する人たちがチャレンジできる土壌は、すでに整っています」

※ 記載内容は2024年10月時点のものです

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