ともに金融BU戦略本部に所属する大野 美佳と土屋 亮平。顧客起点の事業創生プロセスを習得・活用するための施策「FIBU Incubation Lab」の企画・運営を担当しています。SEとして入社したふたりが、いまの仕事に携わるに至った背景とは。それぞれのキャリアと現在のプロジェクトへの想いに迫ります。
SE出身のふたり。それぞれ異なるキャリアを経て戦略本部へ
金融ビジネスユニット 金融BU戦略本部 Lumada事業統括部に所属する大野と土屋。ふたりはともにSE出身ですが、同部署で出会うまでそれぞれまったく異なるキャリアを歩んできました。
学生時代に情報科学を専攻していた大野。2012年にグループ会社に就職したのち、2015年に株式会社日立製作所(以下、日立)へ転籍しました。
大野:最初の5年間はSEとしてお客さま先に常駐し、基盤システムの構築に従事しました。2016年に上司から新規事業の支援に誘われて参加してみたところ、これがとても刺激的な業務で。その後、正式にその部署に異動しました。
業務内容は、がんを発見する技術を用いた新規事業の検討です。日立ではよく「顧客協創」という言葉が用いられますが、お客さまである保険会社さまとともに事業創生に5年間挑戦しました。公的機関やさまざまな取引先と一体となって同じゴールをめざせたのは、非常におもしろい経験でした。
しかし、プロジェクトは2022年3月に終了。その翌月に金融BU戦略本部が立ち上がります。
大野:金融BU戦略本部 Lumada事業統括部の部長がそれまで私がずっと一緒に働いてきた上司で、ともに異動する形となりました。ちょうど担当していた新規事業をクローズするタイミングだったのと、組織の立ち上げフェーズで、組織のミッションを自分たちで考えていくフェーズだと聞いて、それなら新規事業を担当してきた経験を生かせるし、「もっと日立でこんなことができたらいいのに」と考えていたことを実現できるのではと思ったのを覚えています。
一方の土屋には、こんな夢がありました。
土屋:私は以前、パイロットになりたかったんです。その夢が破れた後も、海外と関わる仕事がしたいとずっと思い続けていました。日立の選考に臨んだのは、グローバルに事業を展開する日立ならその想いを実現できると思ったから。入社後は、地方銀行系の案件にエンジニアとして携わる一方で、上司にはずっと「海外の仕事をやりたい」と伝えていました。
そんな土屋のもとに、チャンスは急に訪れます。
土屋:「インドでの語学研修に行ってみないか」と上司が私に声をかけてくれたんです。「もちろん、行きます!」とふたつ返事でインドへ。2カ月間滞在した後、マレーシアでの業務研修にも参加させていただきました。
マレーシアでの1年間はとくに楽しかったです。現地スタッフと一緒に仕事ができる環境はまさに私が求めていたもの。自分の英語力や、エンジニアとしての技術力に手ごたえを感じ、自信もつきました。
帰国後は、再び地銀系エンジニア、海外パッケージの導入・拡販部署を経て、今度はタイに3年半勤務。さまざまなプロジェクトに参画しながら、現地企業の新規開拓に従事しました。
そして、そのタイで現在の上司と出会ったことをきっかけに同本部に異動しました。
事業創生を支援する学習機会とプログラムを提供。既存事業にも通じるスキルを育成
ふたりが現在取り組むのは、金融ビジネスユニットに所属する社員の事業創生を支援するプロジェクト「FIBU Incubation Lab(※)」。新規事業の創生においては、事業創生を担う推進者の強いwillが不可欠であるという議論を経て、その手始めとして用意したのが、社員の「Will(ウィル)」や想いを醸成する「学習と経験の場」と「挑戦の場」でした。
大野:「学習と経験の場」では、顧客起点の事業創生はどのようにやっていくのかを有識者の方から学ぶセミナーや研修、交流イベントなどの場を企画しています。挑戦の場では、「事業を立ち上げたい」「こういう課題を解決したい」と思っている人が挑戦できるよう、公募制の事業創生プログラムを設けました。
「FIBU Incubation Lab」には金融ビジネスユニットに所属する社員であれば、原則誰でも参加が可能です。具体的には、新卒入社の方は入社3年目以上で、経験者採用で入社した方は初年度から参加可能です。2023年9月に開始しました。
金融BU戦略本部の創設から同施策の始動までわずか1年半。本部としての具体的なミッションもプロジェクトも定まっていないフェーズの中で、本プロジェクトはスタートしたと言います。
大野:事業創生を支援する上でどのような施策を実施すべきかを検討するために、まずは社内ビジネスコンテストを実施している企業にひたすらヒアリングを行いました。同時に、社内で動いている新規事業の現場に入り込み、伴走しながら実際に支援することも始めました。
そして辿り着いたのが、「FIBU Incubation Lab」です。事業創生プログラムについては、企画側が実践していないと説得力がないと考え、金融BU全体で始動する前に実際に企画チームメンバー15人が参加者となり、2022年から試験的に進めることも行ってきました。実は土屋は、FIBU Incubation Lab事務局でもありますが、事業創生プログラムの最終審査を通過した唯一のチームのリーダであり、事業推進担当者でもあります。
かつて、自身が携わった事業創生がうまくいかなかった経験を持つ大野は、同プロジェクトを「絶対に実現したい」と強く上申し続けました。
そしてもうひとつ、大野には大事にしていることがあります。
大野:「新規事業を推進する社員に必要な力は何だろう?」と幹部と話し合ったとき、「真の顧客ニーズを捉える力」という結論に至りました。新規事業の創生を支援することのほか、この施策の真の目的は既存事業にも通じる考え方やスキルを身につけること。FIBU Incubation Labを通じて顧客起点での事業創生の考え方を学ぶことを心に留めて、社員の人財育成施策として取り組んでいます。
実際に事業創生プログラムを実践する中で、FIBU Incubation Lab運営や事業創生の推進にも携わっていた土屋は、そんな大野とプロジェクトに取り組むうちに、大事なことに気づいたと言います。
土屋:新規事業においても既存事業においても、大事なのは顧客と課題であり、それを解決策とセットで、自分の言葉で語れなければ、相手に響きません。それが重要なのは頭ではわかっていましたし、今までそれを意識してやっていたつもりでしたが、どこか手応えが薄かったんです。このプロジェクトに参画することで、顧客起点の考え方と行動量が全然足りていなかったことがわかりました。きっとこれは自分だけじゃないと感じました。
体系化された事業創生のノウハウを学び実践することで、真の顧客ニーズをとらえる力を多くの方に身につけていただくことが、金融BUのさらなる成長につながる重要な要素であると考えています。
※ FIBU:Financial Institutions Business Unit の頭文字からなる金融ビジネスユニットの略語
強い想いがあればチャンスをくれる。「どんどん挑戦して」と上司が後押し
今回のプロジェクトには特別な思い入れがあると話す大野。
大野:私はSE時代からずっと、楽しく学びながら仕事ができる人がもっと増えたらと思ってきました。昨日まで「もっと楽しく働きたい」とモヤモヤしていた人が、自分のWillを実現していきいきと働き出す場面を想像するだけで、私はワクワクするしとてもやりがいを感じます。
私と土屋はともにSE出身ですが、それぞれがやりたいことに挑戦し続けた結果、いまに至っています。社員の皆さんも今回の施策でWillに挑戦し、楽しんでもらいたいと思っています。
一方の土屋。社員の挑戦を受け入れ、想いをかたちに変えていける環境が日立にはあると言います。
土屋:上司や同僚がうまく導き・応援してくれたおかげで、多くのことを経験させていただきました。
私や大野がまた新たな挑戦をさせていただくチャンスを得られたように、日頃から想いを周囲に発信して行動し続ければ、希望がかなえられる環境だと思います。
土屋の意見にうなずく大野。さらにこう付け加えます。
大野:上司たちは「どんどん挑戦していい。失敗したら責任を取るから」と言ってくれます。挑戦してみようと思えるのはそんな後押しがあるから。「もっとやりたいことに声を挙げていい」という雰囲気が、社内で高まりつつあるのを感じます。
想いを実現しに日立に来てほしい。「挑戦してよかった」と讃え合える組織に
ともに働くメンバーに求めるのはスキルや経験ではないと口を揃えるふたり。未来の仲間に伝えたいことがあると言います。
大野:必要なのは、前向きに働いていきたいという気持ち。スキルや経験は後からついてくるものだし、想いさえあれば必要なスキルを持つ人を連れてくることもできると考えるからです。
私が一緒に働きたいのは、他人の意見を積極的に受け入れられる人。そんな方に来ていただきたいと思っています。
土屋:「これができます」ではなく、「これがやりたいんです」という人に来てもらえると私もうれしいですね。いまの日立では、そういう人こそ活躍できると思います。
それを支えるために、皆さんが想いを発信し実現できる機会やフレームワーク・メソッドを用意していくつもりです。日立にはどの職場にも並外れて優秀な人がいて、刺激をもらえるのも魅力のひとつ。ぜひ、想いを実現しに来てください。
今後も引き続きFIBU Incubation Labに携わっていきたいと話すふたり。それぞれこんな展望を語ります。
大野:やりたいことがある人がやりたいと声を挙げて、Willに挑戦する姿を見届けたいと思っています。いきいきと働き、学び、「働くのが楽しい」「挑戦してよかった」と思える人が増えてくれたらうれしいです。
土屋:私も大野と同様、支援者の立場で事業創生に携わりたいと思う一方で、私自身のWillを事業創生を通して実現したいと思っています。その過程における自分自身の経験を、事務局としての支援にしっかり還元できるように活動をしていきます。
FIBU Incubation Labはまだ立ち上がったばかり。社員が、そして自身がWillを実現する未来をめざして、ふたりは前進を続けます。
※ 記載内容は2023年9月時点のものです