IT・OT・プロダクトを組み合わせ、国内外の社会課題解決に挑む株式会社日立製作所。デジタルやAIを活用し社会課題解決を行う「AI&ソフトウェアサービス(AISS)ビジネスユニット」では、日立が積み重ねてきた総合力を強みに事業領域を拡大しています。今回は、AISSビジネスユニットで働く魅力や求められる人物像について、同ユニットで活躍する滝川氏と青山氏のお二人にお話を伺いました。
データ駆動社会における最良パートナーをめざして
日立製作所では、長年にわたり鉄道、エネルギー、デジタルといった事業を通して、日本の社会基盤を築いてきました。その膨大な事業領域と知見をデジタルで束ね、変革の中核を担うのが「デジタルシステム&サービスセクター」です。同セクターは、日立の強みであるIT・OT(Operational Technology)・プロダクトを融合させ、「真のOne Hitachi」としてグループ全体の成長機会を創出しています。
その中核セクターにおいて、ソフトウェアとAIの専門家集団として価値創出の最前線に立つのが、私たちAI&ソフトウェアサービス(以下、AISS)ビジネスユニットです。AISSビジネスユニットは、お客さまの課題を起点に、上流の経営・DXコンサルティングからアプリケーション開発、AI活用、そしてマネージドサービスまで、一貫したバリューチェーンで国内外のお客さまの多様な課題解決を支援しています。
私たちの最大の強みは、日立グループが持つ、社会インフラ分野で長年培ってきたOT技術と、最先端のIT、そして確かなプロダクトをつなぐ総合力です。現場の機器から得られるリアルなデータと最新の生成AI技術を組み合わせることで、複雑かつ大規模な社会課題にも迅速に対応します。
AISSビジネスユニットがめざすのは、「2030年のデータ駆動社会における最良のデジタルパートナー」となること。「Lumada(※1)」とAIを駆使し、グループ内外のビジネスユニットと連携しながら、お客さまや社会が直面する多様な課題を解決することで、その未来を実現していきます。
今回は、そうした最先端技術活用の最前線であるAISSビジネスユニットでご活躍されているお二人にお話を伺いました。
(※1)お客さまのデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称
AI×日立のソリューションで社会課題を解決する

AISSビジネスユニット AI CoE / Generative AIセンタ ワンストップサポートサービス 部長/滝川 絵里(右)
AISSビジネスユニット AI CoE / Generative AIセンタ プロポーザルサポート&サクセス 主任技師/青山 朋子(左)
──お二人が所属するAI CoE / Generative AIセンタについて、概要やミッションについて教えてください。
滝川:AI CoEは、AIを軸に日立製作所の売上を伸ばし、社内の生産性向上を推進する中核的な組織です。具体的な活動としては、全社あるいは特定事業向けの共通基盤の提供、AIに関する社内外からの問い合わせ対応や提案支援、ユースケースの創出、ナレッジの蓄積や共有、そして人材育成や企業文化の醸成など多岐にわたります。
一貫しているのは、全社を俯瞰しながらお客さまにどのような価値を届けるべきかという上流から検討・構想し、推進している点です。部署の壁を越え、日立全体としてお客さまの課題に応えることを大切にしています。
青山:AI CoEは全社に対してAI活用の方向性を示す組織であり、日立の強みを掛け合わせながらビジネスを誘導する役割を担っているというわけです。そのうちGenerative AIセンタは売上を創出していく外販の部門で、お客さまから寄せられる多様な相談や問い合わせに応えながらユースケースを創出し、業務改善や新規ビジネスにつなげています。

──どのような組織構成になっているのでしょうか。
青山:全体で50名ほどの少数精鋭の組織です。多くが兼務で所属し、データサイエンスや画像・音声・言語処理といったAI研究開発のスペシャリストもいれば、顧客のDX課題に対応してきた経験を持つメンバーなどさまざまです。私自身、設計開発、製品テクニカル支援、事業企画、DXコーディネーターなどを経て、現在に至ります。
──お二人のキャリアの変遷についても教えてください。
青山:2003年に入社し、ソフトウェア開発や技術支援で経験を積みました。お客さまの全社共通基盤の整備に携わった後、産休・育休を取得。復職後は鉄道系情報システムやデータ統合のマネージドサービス、鳥獣害対策支援サービスなど多様な案件を手掛けてきました。
その後、社内公募制度に手を挙げ、「Lumada Innovation Hub Tokyo(※2)」の立ち上げに参画。「DXコーディネーター」として、経営層から業務部門、DX部門まで、お客さまの多様な課題や悩みを聞き出し、日立の人財とソリューションをつなぐハブとなり、お客さまの価値創造を支援しました。そこから社内FA制度を活用してGenerative AIセンタへ異動し、現在はAIをテーマとした日立の市場投入戦略や案件支援など、AIのビジネス活用をリードし、そこで得たナレッジを蓄積して活用する役割を担っています。
このように、希望する業務や部署に自ら立候補し、キャリアを主体的に選択していける環境は、当社の魅力ですね。
(※2)変化し続ける社会や環境を見据えて、DXを実現していくための協創空間
滝川:私は2006年に入社し、公共機関向けのプラットフォーム運用・構築からキャリアをスタートしました。その後、日立のクラウドサービス立ち上げに参画し、営業力強化や障害対応支援のAIおよびソリューション開発を経験。産休・育休から復職してからは、大学時代に統計学を研究していた経験を生かし、データ分析やAIソリューションの立ち上げに携わっています。AIソリューションの立ち上げを経て、2022年からは社内の生成AI活用推進のほか、共通基盤の導入支援にも従事しました。
私は青山とは異なり、自ら異動を願い出たことはありません。ただ時代の変化とともに、オンプレミス型のSIから、クラウド、データ分析、AIなど担当する業務は変化しており、常に自身の経験を生かせる場を与えてもらっていて、Generative AIセンタへの異動も自身の視野やスキルを広げられるよい機会になっています。
顧客の「ありたい姿」を追求。超上流から描くDXの真価
──これまでで、特に印象に残っているプロジェクトを教えてください。
青山:お客さまと価値を創出する協創拠点である「Lumada Innovation Hub Tokyo」の立ち上げが印象に残っています。DXコーディネーターは当拠点の開設にあわせて新設された職種で、その役割や価値をゼロから設計し、私自身が第一人者として行動してきました。
アジャイルに試行錯誤しながら進めることが多く、日立グループ全体の膨大なソリューションや人財の知見を効率的に把握し、お客さまの課題と結びつけることに特に苦心しました。ある大手企業と取り組んだ未来テーマの検討プロジェクトでは、お客さまの「ありたい姿」の再定義からはじめ、ともにアイデアを出し合いながら、当社のさまざまな専門人材と協業することで、無事成功を収めることができました。この経験から「お客さまが真に求めるもの」を定義する大切さ、そして多様な知見を結集する重要性を学びました。
滝川:私が印象に残っている案件は、2016年に手掛けた「オペレーション・リコメンデーション」というソリューションを立ち上げたことです。このソリューション立ち上げのきっかけは、私がプラットフォームの運用エンジニアだったころの経験にあります。障害発生時、ベテランの技術者が経験と勘を頼りに対応しており、経験の浅いエンジニアは何から手をつけるべきかも判断つかない状況が多かったのです。ベテラン技術者の退職もあり、その暗黙知の継承が大きな課題となっていました。
そこで、保守メンテナンスの報告書から障害発生時の原因・対策を可視化し、原因究明のための確認事項や取るべきアクションをレコメンドするシステムを考案しました。人員減少による経験不足といった現場課題をAIで補う試みであり、運用保守の現場を経験した私にとって、その支援に携われたことは大きなやりがいでした。
──日立製作所だからこそ提供できる価値や、仕事の醍醐味はどこにありますか。
滝川:まず、圧倒的な「総合力」と「連携力」があります。日立は幅広い事業ドメインを持ち、あらゆる分野のプロフェッショナルが数多く在籍するため、お客さまのシステムや事業領域に最適化したソリューションを開発できます。また、ITに加えセンサーや装置などOT領域にも強みがあります。「生成AIとセンサー」「AIとロボット」など、多様な技術を組み合わせて課題解決を提案できる点も当社ならではでしょう。
青山:そうですね。当社にはLumadaをはじめ豊富な知見やユースケースが蓄積されています。そこにLumada Innovation Hub Tokyoや、Generative AIセンタでお客さまのニーズを聞き出す「100本ノック」で得た知識・知見を掛け合わせることで、お客さまの真の課題に寄り添った提案を可能にしています。
ただ、AIはあくまでツールの一つに過ぎません。提供価値の本質は、お客さまが抱える課題や要望を正しく引き出し、それに応えること。思い込みや先入観を持たずにお客さまの課題を聴き、寄り添う姿勢が大切だと痛感しているところです。
滝川:もう一つ、社会課題解決への強い意思と信頼も、当社ならではです。社員一人一人が「社会課題に対応していく」という使命感を持ち、それぞれのスペシャリティを発揮しています。お客さまからも「日立だったらやり遂げてくれそうだ」と信頼を寄せていただいており、この信頼が大規模なプロジェクトを推進する力になっています。

──今後挑戦したいテーマについてお聞かせください。
滝川:私が挑戦したいのは、日本が直面する「人材不足」という社会課題への対応です。労働力人口の減少が進むなか、従来の縦割りを超えて業務を全体最適化する必要性を強く感じています。その一つの解がAIであり、AIとともに働く「with AI」という世界観を日立の技術で実現させたいです。
青山:生成AIほどの大きなトレンドのように、新しい技術や潮流は必ず生まれます。そのときに備え、自らの経験を未来への「伏線」として積み重ねていきたいです。これからも挑戦を続けながら、技術を用いて社会課題の解決につながる価値を生み出していきます。
出典:ビズリーチ掲載記事(2025年9月30日公開)より転載