株式会社日立製作所(以下、日立)が取り組んでいる金融ビジネスユニットで金融システムの開発・支援を担う村田 一久。折しも金融×ITが融合し始めた1999年に新卒で入社して以来、開発一筋のキャリアを歩んできました。そんな彼が語る日立の魅力、見据える未来とは?
金融業界のミッションクリティカルな基幹システム開発を担う
金融ビジネスユニット金融第二システム事業部は、日銀などの政府系金融機関、証券、日本取引所グループ、生損保など、金融業界のミッションクリティカルな基幹システムの開発・支援を担う部署。中でも村田が所属する金融システム第一本部は、大手証券グループ向けのシステムを担当しています。
村田 「われわれの大きなミッションは、お客さまである証券グループのシステムを開発するだけでなく、彼ら、彼女らとともに市場を広げていくこと。金融系ならではのニーズや幅広い要望に応えるためには、新しい技術を取り入れた開発が必要になってきます。
主任技師(課長)として私が率いる、社員10名、パートナー約50名のチームで取り組んでいるのが、まさに新しい技術を使った開発。昨今で言えばAPIやサーバーレス、コンテナなどを用いた開発やSaaS系の導入支援、さらに今後ますます求められる開発の効率化にも力を入れています」
新しい技術を使った開発、すなわちほかの部署ではやったことがない案件に果敢に挑戦し、新たなフレームワークを作り出している村田のチーム。彼らに期待されているのは、単に新しいだけでなく“尖った技術”の追求だと言います。
村田 「日立にある高い技術力、リソースをトータルして束ね、当社だからこそ提供できる技術・ソリューションを“尖った”と表現しています。尖らせるためには、例えば工場なども含めてさまざま部署から幅広く情報を集めたり、データアナリストやAIの部署と連携したり。そうした技術をフロントSEとしてお客さまに展開していくのが、私の役目でもあります」
スキル転換をサポートし、個人の成長をチームの成果につなげる
村田のチームが単に新しいだけではない、尖った技術を突き詰めることになった背景のひとつには、近年のネットバンキングの台頭と進化があります。
村田 「昨今のネットバンキングは、システム更改のタイミングで、必ず何か新しいテーマを取り入れる傾向にあります。そのため、技術動向の大きなトレンドを見ながら、次に来るテーマにもしっかりと対応できるように、常に先行して準備していく必要があるんです。お客さまから相談や要望があったときに『知らないからできません』とは決して言いたくないですから(笑)」
尖った技術を実現していくには、新しい技術を取りこぼさないようにするだけでなく、自ら情報を取りに行く攻めの姿勢が必要だという村田。
村田 「日立はとにかく大きな組織なので、『この技術について教えてほしい』『今後のトレンドを知りたい』と思って動けば、誰かしら詳しい人を見つけられます。とくに事業戦略や技術展開を担う部署とは、コミュニケーションを密に取って情報交換していますね。
Amazonやマイクロソフトのセミナーなども含めて、ある程度情報を集められたら、後はチームメンバーに何を学べばいいのか落とし込んでいきます」
尖った技術集団を率い、チームとして成果を出すために村田が注力しているのは、メンバー個人のスキル転換を進め、成長してもらうこと。
村田 「私のチームは主に基盤系システムを対応してきたメンバーが多く、新たな技術に向き合うためにはスキル転換が重要になります。まずは基盤系システムとの考え方の違いや、メンバー各自の得意なところ・これまでの知識をどう生かせるかをしっかり説明します。
そして、プロジェクトが始まるときには必ず目標を決め、この案件で得られる成果や成長できるポイントを設定・共有します。そうすることで、自分は次に何をすればいいのか、今後どんなキャリアステップがあるのかが明確になり、モチベーションや責任感が高まると思っています。
もちろん、プロジェクトの成功が一番の目標ではありますが、同時にメンバーが成長することでチームが、部署が、会社が成長していく。そのためのフォローアップは大事にしていますね」
知識や技術を得るには事欠かない環境。自ら動くことでやりたいことを実現できる
村田のチームが近年手掛けたプロジェクトのひとつに、大手ネット銀行のATM関連システムの更改があります。テーマは、大きくふたつ。ひとつは、ATMでのさまざまな取引履歴等をMicrosoft Azureで一元管理するという、いわゆるクラウドシフト。開発が始まったのは今から5年ほど前だったこともあり、当時、社内にAzureの実績は、多くはありませんでした。
村田 「AWSでの経験はそれなりに積んでいたものの、Azureとなると勝手が違う部分も多くて、立ち上げには苦労しましたね。知識を得るために、社内のマイクロソフト製品を専門に扱っている部署と連携して、Azureとしての考え方をキャッチアップしていきました。ここでも、日立の事業領域の広さに助けられたと感じます」
もうひとつのテーマは、開発効率を上げるためにサーバーレス化し、その後のアジャイルな開発のフレームワークを構築すること。
村田 「サーバーレス化については、ネット銀行のプロジェクトが始まる1年半ほど前に、大手商社と一緒に取り組んだ経験がありました。そのときに、サーバーレスの考え方や何をすべきかのノウハウの蓄積があったので、それをベースに展開することができました。
また、開発のフレームワークの構築に関しては、大手商社向け開発でも活用したクリーンアーキテクチャーを持ち込みました。これにより、変更に強いシステムができたと自負しています。実際、大手コンサル会社と組みATMでマイナンバーカードのマイナポイントを申請ができるようにするシステムを最初に作ったのは、私たちでした」
プロジェクトが成功した理由は、「日立という会社だったから」と、村田は説明します。
村田 「自分が持っていない知識、めざすべき方向の技術やノウハウも、日立内のどこかには必ずある。知識・技術を得るには不自由のない会社で、それを活用すると、たいていのことは実現できるんです。
また、その技術を別の業界で生かしたいと思えば、日立は幅広い業種のシステムを手掛けているので、その部署に行って展開することができます。自ら動けば得たいものを得ることができ、やりたいことを実現できる。日立は、そういう会社だと思います」
まだ世の中にない、日立にしかつくれないものに挑みたい
村田 「例えば最近のトレンドで言えば、ローコード、ノーコード開発にはさらに力を入れていくと思います。お客さまの中でも新たなサービスを素早く立ち上げて拡充していきたい、というニーズは非常に増えていますし、日本人はオートクチュールが好きという側面はあるにせよ(笑)、今後もう一段階伸びてくる分野だと思っています。
また、メタバースやブロックチェーンなどのWeb3.0分野に関しては、現時点でなかなかマネタイズするのが難しいという課題があります。ただし、さまざまなスペシャリストとのつながりもある日立なので、グループ会社を含め取り組んでいくと思います」
入社以来開発一筋、ひたむきに技術を追求してきた村田は、日立で技術開発に携わる魅力を次のように語ります。
村田 「外部の方から見ると、日立のような大きな会社は、仕事のスピード感や新しいことへの挑戦に消極的なのでは?というイメージがあるかもしれません。でも私が感じるのは、さまざまな領域の仕事があって技術力の高い人が揃っている日立だからこそ、新しい技術を使って大きなプロジェクトに取り組むことができるし、それを自分で主導できる仕組みもある。
自分の技術が、社会的意義の大きいプロジェクトに採用されていくおもしろさ、やりがいは大いに感じられると思います。例えば、今世界的な課題であるカーボンニュートラルについてもいろんな面から積極的に取り組んでいるので、ソーシャルイノベーションで世界を変える、という仕事にも関わることができます」
製造や金融、通信、社会インフラなど、日立が支援する多種多様な業界の課題を解決するため、村田たち技術者は、部署を超えた連携・コミュニケーションを重視していると言います。
村田 「私のチームが、事業部の横断的存在なこともあり、他部署と情報交換する機会は定期的に設けています。そこでは、『○○部が使っている新しい技術ってどんなの?』とか『うちの部署は今後こういう方向性で走ろうとしているよ』という話題に加え、『まだ世の中にない、日立にしかできないものを、最初に作っちゃおうよ』という話もよくしますね。
実際に日立には高い技術力があるので、例え今世の中になくても、『これを作るんだ!』と動き出せば、それができるだけの底力があります。そうした環境におもしろさを感じてくれる人、新しいこと・日立にしかできないことにどんどん挑戦していきたい、という仲間が増えると嬉しいですね」