谷口 祐太郎は、SIerで12年勤務した後、株式会社日立製作所(以下、日立)に経験者採用で入社しました。保険のシステム開発から、まったく異なる分野である中央省庁向けのシステム開発へと業務内容が変わるも、「正直、まったく困らなかった」と語る谷口。日立で感じたギャップや、仕事への想いを語ります。
「どう作るか」よりも「何に困っているか」をこたえてこそ、サービスの価値が生まれる
谷口は、大学で情報学を学び、2010年にSIerに就職。保険会社のシステム開発に従事していました。入社後からプログラミングやテストを行い、4~5年目には、要件定義や顧客折衝といった上流工程を担当。7~8年目には、リーダーとして、プロジェクト全体のマネジメントを担当するようになるなど、着実にキャリアを積んでいきました。
谷口 「システム開発の基本的な技術に関しては、ここで身につけることができました」
そして、谷口は前職で、もう一つ大事なことを学んだと言います。
谷口 「お客さまが何に困っているかを把握することが、システムを作る上で最も重要だということです。というのも、前職に経験したとある二次請けの仕事では、プライムの会社から『こう作ってくれ』という話を受けてシステムを作っても、お客さまとプライムの会社の間での調整結果を受けて、1週間ごとに方針が変わるなどして、翻弄されることがありました。
そもそもお客さまが何に困っていて、このシステムには何が求められているのかを把握していないと、手戻り作業の発生や作業進捗が遅れるなど、リスクも多くなり、設計者が疲弊してしまいます。そうした経験から、『どう作るか』よりも、それ以前にお客さまが『何に困っているのか』を把握することで、システムを利用されるお客さまにサービス価値が生まれるということに気づくことができました」
しかし、折しも会社は、お客さまニーズに寄り添う役割を担うはずのコンサル部門を縮小し、システム開発の生産性向上に注力する事業方針へと舵を切りました。
谷口 「私がやりたい方向性と、ギャップが出てきてしまったのです。そこで、転職を決意しました」
谷口は、自分がめざす開発ができそうなコンサルやプライムに、新たな仕事の機会を求めました。その中で、日立を選んだ理由を、谷口はこう振り返ります。
谷口 「お客さまのニーズを汲みながら要件を決めて、プロジェクトを推進していくという業務内容で言えば、他の企業でも経験できたかもしれません。ただその中でも、日立は、お客さまにシステムを提供した後にも、保守やサポートを提供するなど、よりお客さまに寄り添ったサービスを提供しているので、SIerとしての前職の経験が最も生かせると思ったのです。また業界知識が不足している部分については、入社以降補っていけばいいと思っていたので、日立の研修の多さも魅力でしたね」
谷口にとって最終的に入社の決め手となったのは、採用面接でした。
谷口 「面接の際、4~5名もの方が対応してくれまして、人数の多さに実は少し面食らったのですが(笑)、私が言葉に詰まった部分や、うまく表現できなかった部分を、深堀りしてしっかりと話を聞いてくれました。役職のある方々なのに、とてもフラットにコミュニケーションをとってくれて、質問の仕方や解釈の仕方などの端々に、私のこれまでの経験を尊重してくれていると感じたんです。そうした人間の魅力が、決め手となりました」
こうして谷口は、2021年8月に日立に入社しました。
入社後さらに感じた、良い意味でのギャップ。業界は違えど、お客さま軸は変わらない
日立での谷口は、防衛・航空宇宙・セキュリティ分野を支える技術を核に、中央省庁向けの社会インフラシステムを開発する、社会ビジネスユニット ディフェンスシステム事業部に所属しています。
その中で谷口は、官公庁に向けた情報系システムの自社製品の開発と、半年~1年ごとのバージョンアップを担当しています。
未知の領域であるディフェンスシステムの開発に従事することになった谷口は、入社後どのようにしてキャッチアップしていったのでしょうか。
谷口 「そもそも自社製品自体を把握していなかったので、製品を知ることをはじめ、過去の経緯や各チームの役割分担を把握することが、入社後すぐのミッションでした」
しかし、3カ月を過ぎるころには、谷口はプロジェクトのマネジメントに関わり、複数の案件を推進するようになります。入社後ほどなくして、前職のプロジェクトマネジメントの経験を生かせたのは、「周りのサポートが大きい」と谷口は話します。
谷口 「皆さんが、しっかりと時間を割いて丁寧に教えてくれたので、かなり助かりました。入社したころは、コロナ禍でオンラインコミュニケーションがメインでしたが、『困っていることはない?』とチャットを飛ばしてくれたり、オンラインツールをつなぎっぱなしにして、質問や困ったときにはすぐに対応してくれたり。面接のときから、日立で働く方の人の良さは感じていたものの、これほどとは(笑)。それは入社してみてさらに感じた、良い意味でのギャップでしたね」
それでも、谷口は「分からないことは多かった」と告白します。
谷口 「でも、皆さんが分からない前提で丁寧に教えてくれるので、質問もしやすく、一人で悩みを抱え込む時間はありませんでした。業界知識がなくて困ったという場面はなかったですね」
そうした環境の中で、谷口は今、念願だったミッションに従事しています。
谷口 「プライムという立場で案件に携わり、お客さまと直接会話することで、お客さまの本当にやりたいこと、困っていることを把握でき、そのニーズや背景を踏まえた上で、より深く課題をとらえることができるようになりました。自分がやりたかった仕事に近づいていると、日々実感しています」
とはいえ、中央省庁向けのシステムという、社会的責任の大きいシステム開発に従事することに、重圧などは感じないのでしょうか。
谷口 「業界がどこであろうと、どんなお客さまであろうと、困りごとを解決するという意味では、やることは同じです。その軸は変わらないので、ディフェンスシステムの仕事に対して、大きなプレッシャーや敷居の高さを感じることはないですね」
谷口が異業界でのキャリアを生かして活躍できる大きな理由は、「目の前のお客さまに向き合う」というブレない軸があるからです。
日立に新しい風を吹き込む。経験者採用での入社ならではの役割がモチベーションに
周囲のサポートを力に、新天地での業務を身につけていった谷口でしたが、単に教えてもらうだけではありませんでした。
谷口 「さまざまな場面で、『前職ではどうだった?』と質問を受けることが多く、私の意見や知見を聞いてくれるんです。それは、皆さんが今を最善だとは考えていなくて、常に改善していこうというマインドがあるからだと思います」
その上で、谷口は自分に求められる役割を、次のように感じています。
谷口 「日立に、何か新しい風を吹き入れることが、経験者採用で入社した私の役割だと思っています。例えば、これまでの日立が積み重ねてきた技術や仕事のやり方に対して、生産性を上げるという観点だけではなくて、そもそも、その考え方ってどうなんだっけ?というように、もう少し広い視点で改革のためのインプット情報を提供したいですね」
日立には、そうした新しい風を受け入れる風土があると、谷口は言います。
谷口 「皆さん、保守的ではなく、とても建設的。現在の状況を鑑みて、どう改善していけば良いか、前職の経験や新しい発想をどう取り込めるのかなどを、一緒に考えてくれます」
谷口の部署では、経験者採用で入社した社員は、まだそこまで多くはありません。だからこそ、そのキャリアや広い視点は貴重です。
谷口 「これまで環境の中で、当たり前になってしまっていることに対して、疑問を呈したり、提案をしたりして、各部署と協力しながら、柔軟に改善に取り組んでいきたいですね。そんな風に、自分の過去の経験を踏まえた上でした提案が、『そういう考え方があるんだね』などと取り入れてもらったときは、嬉しいですね。これまでの経験を生かせること、さらに新しい価値につなげられること。それが、日立に入社してからのモチベーションになっています」
根拠ある挑戦を後押ししてくれる日立の環境
2023年1月現在、谷口は自信のある成長を実感しています。
谷口 「前職はソフト面の技術がメインだったので、日立でハード面の技術・知識を身につけることができました。また、以前よりもお客さまに近い立場で仕事ができているので、お客さまに伝わる資料の作り方、提案の仕方など、コンサル的なスキルがアップしていると思います」
加えて、入社時に魅力に感じていた研修についても、期待通りだったと言います。グループ研修やEラーニングを含め、谷口は入社してから年間20講座ほどの研修を自主的に受けています。
谷口 「必修はいくつかありますが、基本的には自由に好きな内容を選択でき、スキルアップのトリガーにすることができます。常にインプットし続けられる環境がありますね」
自ら学び続けながら、さらなる成長をめざす谷口が、今後挑戦していくのは、「今までにない価値を生み出すビジネスの創造」です。
谷口 「もちろん、簡単なことではありません。でも日立に関して言えば、例えば『こういうシステムを開発したい』という企画について、目的やリスクヘッジの方法などの根拠をもって提案すれば、しっかり聞いてくれますし、通ることも多々あります。『過去に前例がないから』などの理由で全面的にNOと言われたことは、今までありません。挑戦を後押ししてくれる環境がありますから、新しいビジネスの創造に挑戦していきたいですね」
そしてもう一つ、日立製作所でエンジニアとして働く魅力を、谷口は次のように話します。
谷口 「日立の、個人を尊重してくれる風土が好きですね。面接のときから感じている、フラットなコミュニケーションや、転職者のキャリアを尊重し、意見を聞いてくれる姿勢。また、たとえ失敗しても、人を責めずに、『改善するためにどうすればいいか』に皆さんが集中しているのも印象的です。後は、日立のエンジニアは、仕事がすべてというより、人生の中の仕事という位置づけで、それぞれ想いを持って働いているように思います。刺激を受けますね」
こうした環境を存分に生かし、活躍するためには、「自発的に動き、積極的に周囲とコミュニケーションを取っていく」ことが大事だと、谷口は言います。
谷口 「私たちが受け身でいては、お客さま自身も気づいていない、お客さまが本当に求めているものや、今までにない価値を提供することはできません。もちろん最初は周りがフォローしてくれますが、数年後を見据えると、自分から動く姿勢・意識が求められます。また役割に応じてさまざまな部署と調整や協力が必要になりますので、コミュニケーションは大事です」
それは、谷口が仕事を進める上で大事にしてきた価値観そのものでした。
めざす将来像を「部下とフラットにコミュニケーションを取り、信頼関係を作れる管理職」と話す谷口は、日立製作所でスキルとともに人間性を磨き続け、末永いキャリアを思い描いています。