
健康寿命の延伸や社会保障費の適正化のため、自治体と協力しながらデータを活用したヘルスケア事業に取り組んでいる株式会社日立製作所(以下、日立)。プロジェクトに携わる田浦 善弘と三浦 伊織が、仕事のやりがいやプロジェクトを通して得た成長、これからの展開について語ります。
ヘルスケアデータの利活用で地域の健康課題を可視化。リソースの有効活用をサポート
田浦と三浦が所属する公共システム事業部 公共ソリューション推進第二本部は、社会保障における課題を解決するための基幹システム構築や、データ利活用によりQOL向上に貢献する事業に取り組んでいます。
その中で2人が携わるのは、自治体が持つヘルスケアデータの利活用事業です。
田浦:国や自治体では社会保障費の増加が課題になっており、健康寿命の延伸や生活習慣病の重症化予防に向けた取り組みが注目されています。そこで、医療や健康診断、介護など自治体が持っているデータを分析し、その地域における課題を抽出して、解決のための事業を支援するのが私たちの仕事です。
三浦:地域によって住民の方の年齢分布や医療・介護に関わるリソースが異なるため、課題も地域ごとに異なります。例えば、糖尿病の患者数が全国平均を上回る自治体のお客さまの場合は、AI技術を活用して医療ビックデータから糖尿病の重症化予測を実施しています。
ほかにも、全世代の健康づくりを推進するための医療費分析システム、歯科の予防目的受診と医療費の相関関係に基づいた歯科検診推進事業など、さまざまなソリューションを提供しています。
地域ごとのデータに基づいた分析・課題抽出ができることは、住民の健康促進はもちろんのこと、医療・介護従事者や自治体のリソース不足という課題にも貢献できると続けます。
田浦:糖尿病の重症化予測で言えば、予測結果から緊急度に応じた受診勧奨や保健指導が可能になります。データに基づき、リスクの高い人や、その人がどんなリスクを抱えているかが分かるようになることで、受診勧奨や保健指導が効率的にできるようになります。
この事業において、田浦はPM(プロジェクトマネージャー)として全体を統括。三浦はPL(プロジェクトリーダー)として自治体と協力会社の橋渡しをしながら担当する案件の進捗管理をしています。
三浦:お客さまである自治体からのニーズや課題を受け、協力会社を含めたメンバーに共有。お客さまに定期的に報告をしながら、課題解決のための施策を進めています。
田浦:この事業は日立グループの会社だけではなく、ヘルスケア領域のサービスを提供しているスタートアップなどとも連携しているため、全体で見ればかなり裾野の広い事業になっていることが特徴です。
お客さまの想いやアイデア、有識者の知見が加わることでサービスが深まっていく
この事業が始動した背景には、日立が長年にわたり社会保障に関するシステム構築に携わり、培ってきたノウハウがあります。
田浦:公共システム事業部はこれまで、被保険者の管理や保険料の計算、給付など、さまざまな社会保障にまつわる基幹システムに対応してきた実績があります。そのため、取り扱ってきた膨大なデータを利活用した取り組みについても、社内の研究開発部門が先行して研究してきました。
ヘルスケアデータの利活用事業のきっかけとなったのは、厚生労働省が推進する国保ヘルスアップ支援事業。都道府県が区域内の市町村とともに国民健康保険の保険事業を実施する場合に、国から補助金が交付されることになりました。「データ活用により予防・健康づくりの質の向上を図る事業」も対象となる事業です。
田浦:これを機に、全国で健康寿命延伸や介護予防のための事業が活発になりました。日立は先駆けて研究を続けていたこともあり、いろいろな都道府県で事業を支援させていただく機会が増えました。
多くの自治体とともに事業を進めてきた田浦は、地域ごとに課題が異なるからこそ、お客さまと接するたびに新たな知見が増え、サービスが深まっていくおもしろさがあると話します。
田浦:もともと私たちは課題を想定した上で、そこに対するソリューションを用意していました。しかし、お客さまにヒアリングしたり、一緒に事業を進めていったりする中で、データから初めて見えてくる事実があったのです。そこにお客さまの想いやアイデア、学識経験者の方をはじめとする有識者の知見が加わることで、ソリューションがどんどんブラッシュアップされる。さらには、新しいものも生まれ続けています。
もちろん、こういった事業に取り組んでいる企業は日立だけではありません。競合他社との切磋琢磨もサービスが磨かれる一因です。その結果、よりお客さまの課題にフィットするソリューションになっている手応えがあります。
分析結果を見るお客さまの反応がやりがい。大舞台にも挑戦しながら成長する
三浦は、2022年に新卒で入社して以来、この事業を担当してきました。現在はPLという役割を担っていますが、自身の中でもとくに成長を感じたのは、入社2年目の1年間だったと言います。
三浦:徐々に仕事に慣れてきたものの、協力会社やお客さまの進捗状況の把握や期日管理に苦戦した時期があったんです。先輩に相談したところ、いつまでに回答が必要なのかをしっかり伝えて、フォローすることが大事だとアドバイスをもらいました。その時は先輩にサポートに入ってもらったのですが、言うべきことをしっかりと伝えている姿が印象的でした。
協力会社のメンバーは私よりキャリアの長い方ばかり。決断するための経験が足りなくて遠慮してしまうこともあったのですが、こちらの求めるものをきちんと明示することを心がけるようになりました。また、目の前のタスクに追われるのではなく、少し先を見て進捗管理できるようになったと感じています。
三浦を見守ってきた田浦は、他の人が気後れするような場面でも積極的に挑戦する姿勢が成長につながっていると話します。
田浦:海外の政府関係者が集まる場で、私たちの事業について英語でプレゼンテーションする機会がありました。2年目の社員が挑戦するには少しハードルが高い部分もあったと思うのですが、しっかりと役割を果たしてくれて、すごいなと驚きました。
そういった挑戦が次の機会につながっていくので、積極的にトライできる姿勢が三浦さんの一番の強みなのだと思います。
三浦:私としては、どのくらいすごいことなのかを分かっておらず、好奇心だけで引き受けてしまったのですが(笑)。でも、責任を果たせたことは自信につながりました。
大きな機会にトライしながらも、日々お客さまやメンバーとしっかり向き合う。地に足をつけながら成長している三浦は、この事業に携わるやりがいも感じています。
三浦:データとして分析結果が出るので、お客さまの「うちの県はこんなに受診率が低いんだね」「この施策は結果が出ているね」といった反応を確かめることができます。
そういったリアクションを見るたびに、お役に立つことができているのかなと感じられることが一番のやりがいです。
地域資源を生かして健康を支える「社会的処方」の普及を。めざすは海外展開
事業の立ち上げから関わってきた田浦は、幅広い事業領域を持つ日立だからこその強みを感じていると話します。
田浦:金融領域で保険会社向けにリスク分析のノウハウを持っていたり、研究開発拠点があったりと、これまで日立が培ってきた技術を事業部の垣根を超えて共有することで、さまざまな展開が生まれます。
逆を言えば、私たちのノウハウが他の事業部や自治体以外のお客さまに貢献できる可能性もあるということ。横のつながりで新たな展開を図れることがおもしろくもあり、我々の強みだと思います。
事業部の枠にとらわれないつながり──それは三浦も感じている日立の魅力です。
三浦:幅広いジャンルの研修があり、早い段階でトライアンドエラーの環境に飛び込めることが成長につながっていると思います。
また、営業部門など他部署の同期たちと交流する機会もたくさんあるんです。職種が違うからこそ、いろいろな視点に触れることができて刺激になります。
国内で多くの自治体と協働しているこの事業。積み重ねている事例と日立の技術を掛け合わせ、見据えるのは海外展開です。
田浦:現在、自治体のお客さまや大学と一緒に、「社会的処方」の普及に向けたプロジェクトを進めています。社会的処方はイギリスで推進、普及されている活動で、医療的サービスに限らず行政や民間の地域活動、サービスといった地域資源を活用しながら支え合うことを推進する施策です。私たちは、地域課題の可視化と、AI技術を活用した業務支援を行っています。
まずは国内で未来型健康社会の実現に向けた実証事業を進めていき、日本の先進的な取り組みを海外にも広げていきたいと考えています。
三浦:海外の方と仕事をするのは夢のひとつなので、海外展開する際は、ぜひ私も関わってみたいです。そのためにも、まずはPLとして独り立ちする必要があります。お客さまとの調整をはじめ、先輩に頼らずとも自分で進められるように努力したいと思います。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです